視聴覚教育時報 平成25年8月号(通巻680号)

私のことば/自作動画教材今昔物語

須藤 太郎(日本学校視聴覚教育連盟会長・東京都墨田区立八広小学校長)

 もう、かれこれ30年以上昔のことになるが、大学の授業で8ミリフィルムの映画を制作した。教えてくださったのは、今は押しも押されもせぬ大映画監督になられた金子修介先輩である。

 当時、まだ学内に残っていた防空壕跡?を舞台にドラキュラのパロディーを撮ったが、稚拙きわまりない内容であった。思い出すだけで恥ずかしい。

 このときに、映像の編集に生まれて初めて関わった。現像された8ミリフィルムを必要な部分だけ残して切断し、テープで接着した。撮影よりも膨大な時間がかかることに驚愕した。

 そのあと、すぐに奉職し、品川の小学校で教鞭を執ることになった。林間学園や移動教室に当時は大変重たかった「デンスケ」を肩に背負っていった。右手に大きなカメラと三脚を抱え、登りの山道で撮影し、走って列を抜き去り、また改めて子どもの顔を撮った。若かったとしか言いようがない。

 学校に帰り、夏休み明けまでに放送室で汗だくで編集した。やはり、膨大な時間がかかったが、喜んでくれるであろう子どもたちの顔が目に浮かび、うきうきワクワクしたものだ。このときは、ただ切ってつなげただけの幼稚な編集であったが、大学時代の貴重な経験が生きた。

 案の定、とても喜ぶ子どもたちの姿を前に、視聴覚人としてのやりがいを感じた。それから約30年、今も学校視聴覚教育に携わることになったのは、あの達成感があったからだ。視聴覚教育の先輩たちも同様に感じたのではなかったか。動画が我が国にもたらされ、自作も可能となったときに、子どもを喜ばせたい、容易に分からせたい思いから日本各地で数多くの優れた自作フィルムが制作された。

 やがて、映画からアナログビデオの世界になっても、絵コンテの描き方や、撮影の方法、パンの仕方、三脚の活用、編集技法など、不易なノウハウは残った。

 ディジタルビデオの時代になった今、つくづく感じることは、どんなにハード面が進んでも、ソフト面には変わらないノウハウがあることだ。一視聴覚人として、若い世代に確実に伝えていきたい。

平成25年度 全視連視聴覚教育功労表彰者

 全国視聴覚教育連盟では、各都道府県指定都市教育委員会および各加盟団体の推薦により、平成25年度 全国視聴覚教育連盟「視聴覚教育功労者」11名を下記のように決定いたしました。

 なお、表彰式は10月25日(金)・26日(土)開催の旭川市での「視聴覚教育・放送教育全国大会・北海道大会」の合同全体会(10月26日)において執り行う予定です。

 

 第16回 ・ 平成25年度 全国視聴覚教育連盟視聴覚教育功労者および功績概要は当該ページをご参照ください。

 なお、表彰式は10月25日(金)・26日(土)開催の旭川市での「視聴覚教育・放送教育全国大会・北海道大会」の合同全体会(10月26日)において執り行う予定です。

視聴覚ライブラリーと著作権(1) 再確認─映画・ビデオ教材等の著作権

  視聴覚ライブラリーが主務とする映画やビデオ教材の団体への貸出や、上映活動等について、著作権法上どのようになっているのか、改めて、視聴覚ライブラリーの貸出等で留意すべき事を再確認してみました。

視聴覚ライブラリーが行う映画やビデオ教材の貸し出し

  視聴覚ライブラリーの主務とも言うべき映画やビデオ教材の貸出等については、著作権法第38条5項で、映画フィルムその他の視聴覚資料の利用に供する事を目的とする視聴覚教育施設、つまり視聴覚ライブラリー等では映画等の著作物の貸出を受けるものから料金を受け取らない場合は、映画やビデオ等を貸し出す事ができる。とされています。

  しかし、この場合、貸出を行う視聴覚ライブラリーは、当該映画の著作物または当該映画の著作物につき権利を有する製作販売会社へ補償金を支払うよう決められており、権利者団体と全視連が協議を行い、ライブラリー価格が設定されている訳です。

  また、貸出の対象となる映画フィルム、ビデオに関しては、学校教育及び社会教育目的に適合する視聴覚資料とすること、また、その運用に当たっては映画・著作物の劇場上映、販売、商業貸与と競合するような映画の著作物の貸与は行わないようにとされています。

社会教育施設等への映画やビデオ教材等の貸し出し

  映画の著作権は、他の著作物とは異なり、社会教育施設等における教育目的での映画等の著作物の利用に認められる場合に貸し出すことができるわけです。

  一般市販ビデオ及びレンタルビデオを学校その他の教育機関で利用することは、著作権者の利益を不当に害するということで、権利者団体では認めていません。

  つまり、家庭内での視聴を目的に、個人顧客に販売(有償貸与)しているビデオソフト及び、家庭内での視聴を目的として個人顧客にビデオソフトを貸し出するレンタル業務は、著作権者(製作者)及び権利者団体(例:日本映像ソフト協会等)と、頒布権や上映権を行使する契約に基づき、レンタル業者が業務を行っているからです。

  上映権は複製権や頒布権と同様に著作権者が持つ独占的な権利です。市販・レンタル用に提供しているビデオソフトは、映画等の著作物の著作権者が、家庭内視聴に頒布先と用途を限定して許諾しているものであるかぎり無断で教育目的でも団体等の上映会や貸与が許されるものではありません。

  個人や家庭内視聴を目的として、販売・レンタルされるビデオだけに、その価格は安価なものになっていますが、教育目的で団体等を対象に貸与や上映会を行う場合、前述の規定にあるように、適当な補償金が加えられて価格が設定されています。

  つまり、団体貸出を行う視聴覚ライブラリー等が購入するビデオ教材は、ライブラリー価格として定価にかなりの補償金が上乗せされていますし、図書館等も同様に価格に補償金が加えられています。

視聴覚ライブラリー所有の16ミリ映画教材やビデオ教材の移動・廃棄

  時報や全視連ホームページ等で、時折お知らせしていますが、視聴覚ライブラリー等が購入した16ミリ映画フィルムやビデオテープ等の老朽化や、組織の廃止等により他へ移動する場合、著作権利者である製作会社に対して、廃棄または移動する旨の通知を行う必要があります。

  映画やビデオ教材の場合、著作権法的表現で言うと映画やビデオに表現されているコンテンツの頒布を受けている事になり、コンテンツに関する権利は著作権者にあります。

  その映画フィルムやビデオテープ等を老朽化したから廃棄するとか、ライブラリーが廃止になるので、他に移動する場合、その映像教材の著作権を持っている製作会社にその旨通知する必要があります。

  この事については、権利者団体と視聴覚ライブラリー等利用者を代表する団体(全視連)が、協議を行い、前述のような場合、県単位の加盟団体を通じて、全視連が廃棄・移動通知に関する事務を行う事になっています。

  しかし、全視連非加盟の県等の視聴覚ライブラリーの場合は、個々の視聴覚ライブラリーが、それぞれの映画やビデオ教材の著作権を持つ製作会社へ直接通知事務を行う事になってしまいます。

  全視連として、権利者団体との連絡会議を持ち、問題の解決に努力しています。

  注:詳しくは、全視連事務局

 TEL 03─3591─2186

 E-mail info@zenshi.jp

平成25年度 優秀映像教材選奨 入賞作品

 一般財団法人日本視聴覚教育協会主催の標記コンクールの入賞作品が決定した。文部科学省、毎日新聞社後援によるこのコンクールの表彰式は、9月20日(金)に東京都千代田区の霞ヶ関ビル・東海大学校友会館において開催される予定で、入賞作品上映会も併せて行われる。

 今年度の参加部門は、「小学校(幼稚園含)部門」「中学校部門」「高等学校部門」「社会教育部門」「職能教育部門」「児童劇・動画部門」「教養部門」の7部門、参加対象作品は、平成24年6月1日から平成25年5月31日までに完成したものを対象とした。今年度は22社・114作品の応募があり、左記のような入賞作品を決定した。

 

【教育映像】最優秀作品賞(文部科学大臣賞)3作品

小学校(幼稚園含)部門〔特別活動〕

  • 「いじめと戦おう!〜私たちにできること〜」(DVD/21分) 東映(株)

中学校部門〔保健体育〕

  • 「安全に楽しく学ぼう 保健体育 柔道」(DVD/29分)東映(株)

職能教育部門

  • 「安全な柔道の授業づくり」(DVD/40分)東映(株)

 

【教育映像】優秀作品賞

社会教育部門(8作品)

〔家庭生活向〕
  • 「家庭の中の人権 生まれ来る子へ」(DVD/25分)東映(株)
  • 「高齢期は食べ盛り 〜正しい知識で老化を防ぐ〜」(DVD/36分(株)放送映画製作所
〔市民生活向〕
  • 「希望をささえる 3.11その時、保育園は“続編”」(DVD/71分)岩波映像(株)
  • 「まず命を守る備え 集合住宅・マンションの防災対策」(DVD/22分)(株)映学社
  • 「無関心ではいけない!障害者の人権 障害者差別解消法を理解する」(DVD/24分) (株)映学社
  • 「ほんとの空」(DVD/36分)東映(株)
  • 「あなたの偏見 わたしの差別 〜人権に気づく旅〜」(DVD/30分)東映(株)
  • 「地震や津波で死なないために ─心に刻む5つのこと─」(DVD/15分)東映(株)

 その他、優秀作品賞として小学校(幼稚園含)部門に4作品、中学校部門に8作品、高等学校部門に3作品、職能教育部門に3作品、教養部門に1作品が入賞した。

緑綬褒章を受章して─36年余りの地道な地域活動が評価─

16ミリ試写室 会長 松澤 澄江

 この春、思いがけず地域交流支援活動奉仕団体として緑綬褒章を受章いたしました。去る5月16日に厚生労働省にて、褒章の記褒章の伝達を受け引き続き皇居へ参内し、豊明殿において天皇陛下に拝謁しお言葉を賜る、素晴らしい体験をいたしました。

 この受章に際し、多くの方々から温かなご祝辞を頂戴し、さらにマスコミから取材を受けるなど、この受章の重みを実感しているところでございます。

 活動をはじめて36年余り、この間、会の生みの親であります故小澤英夫先生(社会教育主事)の「一粒の砂に」を忘れることなく、神奈川県横須賀市の活動環境の中で、会員の小さな手を合わせて楽しく、そして地道に地域活動を積重ねて参りました。これも偏に、会を育み発展にご尽力下さいました諸先輩はじめ多くの方々のご指導、ご支援の賜と深く感謝申し上げますと共に心よりお礼申し上げます。

継続的な活動を前向きに

 顧みますと、市教委社会教育課が市内のPTAで活躍する女性たちをターゲットに16ミリ映写機の講習会(全6回位)を開催、その修了生40名がS52年に会を創設、視聴覚資料を活用した社会教育活動をはじめました。当時は視聴覚メディアとして16ミリ映像が中心で、毎年会員数も上映活動数も増え続け、S59年には96名、H元年度の上映回数は200回余りとなりピークをむかえました。その後メディアはVDへ、そしてIT時代へと変遷する中で、会員は減り続けて現在17名となりました。上映回数は毎年140~170回を推移しておりましたが、H23年には会員の減少と高齢化を理由に3割ほどの削減を行い、以後110~120回を数えております。

 全体活動として、H12年から有料上映会に取り組み、「廉価で心に響くメッセージを届ける」ことを目的に、今年15回目を迎えています。さらに会員の資質の向上や自己実現のために、会員の要望に合わせて数々の研修会を実施し、学び続けています。また、年4回「16ミリ試写室だより」や会のリーフレットの発行、会の記念誌「かがやき」5冊と追悼集3冊の編集発行をするなど活動の記録を残すことにも力を入れ、毎年、どぶ板バザールにも出店して、僅かでも自ら活動資金を調達しながら、種々の活動を続けて参りました。

より良い活動環境を求める努力を

 このように長年繰り返される活動の中にも、常に新たな出会いや学びがあり、「活動の原点に立ち返り、目的を見失うことなく少しでも前へ」を心掛けて参りました。しかし、今、会では会員の減少と高齢化が進む一方で、市視聴覚ライブラリーでも16ミリフィルムや機材の老朽化にもかかわらず、多様なメディアに対応する視聴覚資料や機材の整備が遅れている状況で、「いつまで私たちの活動を継続できるのか」、が問われています。

 会員一人ひとりが熱心に取り組んだ地道な地域活動が評価されたこのたびの受章は最高のご褒美であり、大きな自信となりました。これを励みに、今後は地域活動とともに、より良い活動環境を求める一層の努力をして参りたいと思います。