視聴覚教育時報 平成24年12月号(通巻676号)index
◆フィルムと共に生きる/鈴木 文夫((有)鈴木映画・映写技師)
◆全視連改革中期計画(平成24年度・第3年次) 推進状況−全視連ビジョン策定へ−
◆全視連ビジョン構築のためのアンケート調査の実施
◆平成24年度 全視連講師派遣事業事業実施報告
◇−平成24年度 岩手県地域視聴覚教育協議会専任職員等研修会(岩手県地域視聴覚教育協議会連絡協議会)
◇−平成24年度 盛岡教育事務所管内視聴覚教育担当者等研修会(盛岡教育事務所管内教育振興協議会)
◆訃報
「映画はスクリーンに写してはじめて完成する。その映画を写す映写技士は映画の仲間である」と山田洋次監督から聞かされた。私は予てから「映画が芸術なら、映写も芸術だ」と主張してフィルムを写して来た。この二つの言葉は、前者は映画の作り手からの映写技士への激励と期待であり、後者は映写技士の責任と自覚であり、お互いの信頼である。これこそが私の映写の哲学である。
映画は人に感動を与える道具であり、映写には感動を伝える力があると教わった。その力を証明するため、私は57年間フィルムを写し続けて来た。その中で私が感動した現場を紹介したい。
1980年代、校内暴力が多発し社会問題化する最中、教育の現場で、先生が生徒を刃物で刺す事件が起きた。事件後、その学校で映画を写す機会があった。
当日私達は不測の事態に備えスタッフを増員し、又先生方も映写機の前に席を作り、万全の態勢で臨んだ。予想した通り騒然とした中で映画をスタートさせた。しばらくして一人の少年が前方の入り口から入って来た。少年は決められた自分の席から椅子を持ち出し、後方の映写機の横に足を投げ出して座った。開始から数分後、少年は姿勢を正し、食い入るように画面に集中し始めた。
映画は厳しい大自然の中で力強く生きる老人と少年、動物の死を通して命の尊さを写し、エンドタイトルがはじまる、と同時に少年は椅子を元の場所に戻し、会場を出て行った。
私は「少年が人間に生った」と心の中で叫んだ。教頭先生が「芸術は偉大だ」と小声で呟いた。映画の力を実感した映画会であった。因みに2012年の東京映画祭のテーマは「今こそ、映画の力を」である。
今、子供達のいじめが全国に広がり社会問題化している。私は叶う事なら是非、子供達に映画を届けたい、感動を伝えたい、いよいよ視聴覚教育の出番だ。
私は2012年8月、京都南座にて山田監督の全作品を35ミリフィルムで上映した。映画の開始直前「カタカタと云う音が聴こえます、これは映写機の音です」とアナウンスが入り映画が始まった。
平成20年度にまとめられた「全視連の組織及び推進体制の改革に関する提言」は、近未来型情報化社会を見通した全視連の事業推進中期目標を掲げ、3か年計画により実施してきました。
■第3年次中期目標
(1)IT化に対応した事業改善を図る
社会及び教育におけるIT環境の整備が進み、インターネットをはじめ地上デジタル放送、モバイルメディア等の普及によるメディア利用の多様化が定着し始めている。
このようなメディア環境の多様化と進化をふまえ、従来型の視聴覚メディアを中心に展開してきた全視連事業について改善を進める。
(2)地域における教育メディア利用の活性化支援事業を進める
デジタル時代に対応したメディア利用をキーワードに、従来の視聴覚メディアを大切にしつつ、今日のICTメディアや放送メディア等と融合したメディア利用や学習機会の提供、教育メディア研修を推進し、加盟団体の強化を支援し、時代に対応した教育メディア利用推進の継続的な取り組みを行う。
(3)ブロック化等組織体制の見直しと他団体との連携協力による事業を行う
生涯学習社会における全視連の役割を見極めつつ、困難な課題を抱えつつも組織体制再構築への努力の継続、全視連の特色である著作権処理、講師派遣事業、全国大会をはじめ研修・研究機会の提供等、社会教育関係団体、教育メディア関係団体と連携した活動を推進する。
また、組織体制を強化するために、都道府県レベルの組織を持たない地域視聴覚教育施設の単独加入をすすめ、地域に密着した教育メディア利用推進体制の強化にも寄与する。
(4)事業改善の段階的継続的な取り組みを行う
メディア利用の多様化を組み込んだ事業計画、負担金軽減を含む財政計画の段階的改革、組織体制の建て直しと活性化等、年次計画を策定し取り組んでいるが、組織体制の問題等、即実現が難しい事業については再検討し、段階的継続的に取り組むようにする。
■中期目標に基づく第3年次事業計画
以上のような目標に基づいて本年度は、生涯学習社会において全視連が果たすべき役割を見極めつつ、加盟団体や社会教育関係団体、教育メディア関係団体との連携を密にした活動を行うことを盛り込みました。また、時代に対応したデジタルメディアの利用推進、地域の絆を育む視聴覚メディア利用の推進等を中核とした事業及び支援体制の強化等に取り組んでいます。
昨年度まで実施してきた講師派遣事業、ブロック別研修会支援、広報事業の改善等々の継続、特に、東日本大震災により被災した県市町村視聴覚センター・ライブラリーへの継続的支援を前提に次のような目標を組み込みました。
@社会教育及び教育メディア関係団体との協働体制の確立
A生涯学習メディア研修機会の拡充
B地域の絆を育む視聴覚活動の推進
C被災地視聴覚センター・ライブラリーへの継続的な支援
■事業の実施状況
以上のような第3年次中期目標を踏まえ、本年度は次の様な事業を推進しています。
・加盟団体代表者・事務局長会議(改)
一昨年度の代表者会議、昨年度の理事会・被災ライブラリー報告会など、実質的な加盟団体代表者や事務局長を対象に情報交流の場として、その内容を一部修正し、全国大会の折に会議及び研修を行いました。
・期日:平成24年8月2日(木)
・会場:東京 国立オリンピック記念青少年総合センター
・各加盟団体間の情報交換及び協議、質疑応答
・研修:文部科学省担当者
特に本年度合同全国大会全視連関係の代表者・事務局長会議には、文部科学省生涯学習政策局参事官補佐西條英吾氏より行政説明が行われ活発な質疑応答が行われ、成果を上げることができました。
・教育メディア利用推進会議(改)
昨年度発足した社会教育及び教育メディア関係団体との連携により、生涯学習における教育メディア利用を推進するための方策及び活動について広く協議を行う同会議では、その協議内容等について、各団体のメディア利用事業に関する情報交換や共通理解を図るための協議を行い、今後も継続して開催して行くことが確認されました。
参加団体
視具連、民教協、映文連、視聴覚協会等
・各加盟団体研修機会への支援(新)
昨年度まで実施してきた、講師派遣事業に加えて、各加盟団体が自主的に行っている研究大会や研修会等を支援するために、主催者である各道府県あるいは市町村の視聴覚教育関係施設の研修機会に対して、事業の共催、情報提供等を行ってきました。
この事業に関しては、地域における、教育メディア利用の活性化を図るため、さらに拡大することが望まれています。
今年度終了する中期計画から、さらに長期的展望に立った全視連ビジョンを策定するため、「全視連ビジョン策定委員会」を立ち上げ、ビジョン提言をまとめるための協議を行っています。
■全視連ビジョン策定委員会開催
去る11月20日(火)一般財団法人日本視聴覚教育協会会議室において、第4回全視連ビジョン策定委員会が開催されました。
今回は、ビジョン策定の方向性を探るために実施するアンケート調査の目的・内容・依頼先等について協議が行われました。
〈協議の概要〉
・アンケート結果の比較分析ができるようにする。
・全視連と加盟団体との関係性が分かるようにする。
・全視連の存在意義を明確にする。
・加盟団やAVLの好事例などについて積極的な情報の発信を行うようにする。
・ ICT教育利用と視聴覚教育との関係を明確にする。
以上のような協議を行い、次のようなアンケート調査内容が決定し、過日69の調査対象団体及び役職者に対してメール及びファックスによりアンケート調査用紙を発送しました。
第5回委員会では、アンケート集約結果を踏まえ、1月22日(火)に開催することが決まりました。
■全視連ビジョン策定に関するアンケート調査実施要綱
@アンケート調査実施の目的
全国視聴覚教育連盟は、伝統的な視聴覚教育推進団体から新しいメディアの時代に対応できる教育メディア利用推進支援団体として、どのようなビジョンを持ち、実現のための組織体制や事業を展開したらよいか、加盟団体(各都道府県視聴覚ライブラリー連絡協議会等)の、意識調査を実施して、実現性のある将来像を策定するための基礎資料とする。
Aアンケート調査対象者
各加盟団体関係者及び元加盟団体関係者及び専門委員等
B実施時期
平成24年12月3日?14日 配布・回収
Cアンケート項目
問1.これからの全視連活動 推進改善策
問2.これから全視連が努力 すべき活動
問3.加盟団体の現状と全視 連組織
問4.加盟団体の組織運営上 の課題
問5.デジタル化に伴う加盟 団体の取組
問6.電子メディアと研修体 制の現状
Dアンケート調査結果の利用
全視連のビジョン策定に際して、アンケート結果を基本資料として利用し、現実を踏まえつつ実現可能な報告書を作成する。
Eアンケート送付先
・加盟団体35 →メール送付 →メール返信
・センター協議会9 →郵送 →ファックス返信
・退会都道府県のAVL 11 →郵送 →ファックス返信
・専門委員14 →メール送付 →メール返信
全視連に加盟する公立視聴覚センターの減少及び加盟団体の相次ぐ退会への対応が迫られています。またICT化の進展と視聴覚センター・ライブラリーの現状を踏まえ、ビジョン策定委員会では、従来型の全視連から、新たな「全視連のネクストステージ」を検討してます。
各加盟団体が例年実施する研究会・研修会に対して“全視連指導協力者会議≠フ学識経験者の中から、要請に応じて講師の派遣やその謝金を支援する標記事業には、今年度4か所(岩手県、盛岡市、千葉県、新潟県)より申請があった。今号ではすでに実施され報告書の提出をいただいた岩手県と盛岡市のようすを紹介する。
(詳細は下記、2つの柱にて紹介)
■趣旨
県内の各地域視聴覚教育協議会の連携・協調を図るとともに職務に関わる研修を深め、専任職員としての資質を高める。
■主催
岩手県地域視聴覚教育協議会連絡協議会
■共催
岩手県教育委員会
■期日
平成24年6月14日(木)
■会場
岩手県立生涯学習推進センター
■対象
(1)地域視聴覚教育協議会及び市町村ライブラリー専任職員等(分館も含む)
(2)県立図書館視聴覚資料担当職員
■日程
■講師
全国視聴覚教育連盟副専門委員長(東京都足立区教育委員会子ども家庭部青少年課青少年教育担当係長)
村上 長彦 氏
■内容
【講義】「視聴覚教育推進の方向性」
■成果等
○現在における視聴覚教育の位置づけや媒体の持つ意味・特徴等について、その変遷等も含めて確認することができた。
○今後の視聴覚教育の方向性や、資料・機材等のとらえ方、学習者との関わり方等についての視点を示していただくことができた。
○参加者が普段抱えている著作権のとらえ方等に対する疑問にも丁寧に対応していただくことができ、大変有意義であった。
■実施期日
平成24年 7月25日(水)
■実施期日
13時30分 〜 16時30分
■実施場所
サンセール盛岡
■参加状況
参加者数 41人
■実施内容
@講演
演題:「視聴覚教材の効果的な活用について」
講師:全国視聴覚教育連盟副専門委員長 照井 始 氏
視聴覚教育の歩みから近年の情報化社会の状況、デジタルメディアの活用など、様々な事例をもとに、幅広く紹介いただいた。
A情報交換・協議(グループワーク)
テーマ「視聴覚教材(機器)の効果的な活用について」
視聴覚教材(機器)の環境、活用状況、困っていること、課題等について出し合い、その要因や解決策等についてグループで協議した。
■成果
・講演では、最先端の高校の授業(i Pad使用)や効果的なデジタル教材の活用例を紹介していただくことで、これまで使い方がわからなかったり、積極的に活用しようとは思っていなかった参加者にとっては、よいきっかけになったと思われる。
・情報交換・協議を行うことで、それぞれが抱えている課題や悩みなどを共有することができ、解決に向けた協議も見られたことはよかった。
■課題
・参加者が学校視聴覚担当者や社会教育担当者、ライブラリー関係等、様々だったことにより、内容も身近に感じられるものと、そうでないものがあったと思われる。今後に向けて参加対象者を絞ったほうがよいか、検討する必要があると感じた。
・デジタルメディア等の機器を使った演習の希望があった。参加者のニーズに即した研修会を考えていきたい。
全国視聴覚教育連盟の常任理事(名古屋大学名誉教授、一般財団法人日本視聴覚教育協会顧問)の纃N雄氏が、11月23日、虚血性心不全のため、ご逝去された。享年83歳。
通夜は11月30日、告別式は12月1日に、東京都品川区西五反田の桐ケ谷斎場において執り行われた。
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