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視聴覚教育時報 平成21年9月号(通巻653号)index◆私のことば Cool Head, Warm Heart/齋藤 晴加(文部科学省生涯学習政策局参事官) ◆「全国視聴覚教育連盟 視聴覚教育功労者」決定―13名の方々が受賞― ◆平成21年度「新教育映像に関する調査研究事業」 ― 6視聴覚センター・ライブラリーが参加 ― ◆私のことば Cool Head, Warm Heart/齋藤 晴加(文部科学省生涯学習政策局参事官) 昨年来の世界的な景気後退の中、各国はICTに関する国家戦略を次々に打ち出しました。英国の「デジタルブリテン」、米国の「技術・イノベーション戦略」、フランスの「フランスニュメリック2012」などです。いずれもデジタル技術の基盤(インフラ)としての性格に着目し、今後の各国の経済成長の戦略を描こうとしたものです。こうした中、我が国もIT戦略本部が本年7月、「i-Japan戦略2015」を発表しました。その中で、教育・人財分野は、電子政府・電子自治体分野、健康・医療分野と並んで、三大重点分野の一つとして位置付けられました。子どもの学力や情報リテラシーの向上のために、ハード・ソフトの一体的整備・充実、情報教育の充実、教師のICT活用指導力の向上、校務の情報化等を進めることとしています。そういう意味で「教育の情報化」は、社会のIT化が進展する中で我が国が国際競争力を維持していくためにまさに国家「戦略」として着実に取り組むべきものでありましょう。 ◆「全国視聴覚教育連盟 視聴覚教育功労者」決定―13名の方々が受賞―全視連が例年実施している「全国視聴覚教育連盟視聴覚教育功労者表彰制度」も本年度で第12回を数えることとなりました。今年度は、教育委員会並びに加盟団体より視聴覚教育推進にご尽力され、ご功績のあった方々を全国より推薦いただき、去る8月24日(月)に選考委員会を開催し、下記のように13名の方々が功労者として決定いたしました。なお、表彰式は、10月28日(水)愛知県・岡崎市民会館で行われる全国大会全体会の席上で行われます。 →第12回・平成21年度 全国視聴覚教育連盟視聴覚教育功労者 功績概要 ◆平成21年度「新教育映像に関する調査研究事業」 ― 6視聴覚センター・ライブラリーが参加 ―
「新教育映像に関する調査研究事業」は、視聴覚センター・ライブラリー等視聴覚教育関係施設の協力を募り、生涯学習に役立つ市販映像教材として、どのような作品が必要か、利用者が求める市販映像教材について調査研究を行い、その成果を教育映像制作に反映させ、作品の質的向上を図ることを目的として実施するものです。今年度は全国の6視聴覚センター・ライブラリーより応募をいただき、下記表のように18作品が調査研究対象作品としてアンケート調査を実施することになりました。 ◆キーパーソンに聞く 特色ある視聴覚ライブラリーの活動「けっぱる!ライブラリー一筋35年 ―16ミリ映画で世代を超えたつながり―」〈前編〉盛岡教育事務所管内教育振興協議会(中央地域視聴覚ライブラリー)専任職員 石塚 公美子 氏
【インタビューに当たって】
中央地域視聴覚ライブラリーも、以前は16ミリ映画の貸し出しを主流に行っていました。 昭和52、3年頃よりビデオテープが普及し始めると、ほとんどの教育施設では新しいメディアの導入に傾斜していきましたが、私はライブラリーの先輩方が集めた数多くの16ミリ映画をそのままにして、新しいメディアへ移行することに疑問を抱きました。私は、ライブラリーの財産を守っていきたいと考えたのです。 そこで、16ミリ映画の普及のため、当ライブラリーで講習会を年間3回実施し、多くの方が16ミリ映写機操作の資格を取得されました。けれども、子どもが成長すると16ミリ映画は忘れられ、また学校教育現場においてはビデオ教材の利便性が評価されていたこともあって、思うように普及は進みませんでした。 そのため、学校視聴覚教育協議会と相談して、ボランティアの助力を得て16ミリ映画を存続させていくことになりました。先例のあった宇都宮や仙台に足を運んでボランティア育成方法を学び、盛岡で映写ボランティアを募りました。 これが現在の活動の原点ですが、「ボランティア」という概念は、当時はまだ東北には根付いておらず、働きかけになかなか応じてもらえず苦心したものでした。 今では、以前に当ライブラリーで16ミリ映写機操作資格を取得した方で、当ライブラリーの映写ボランティアを勤めて下さっている方もいます。ある日、子ども会で保護者の方から「私が小学生のときに見た作品を、自分のこどもと再び見られると思いませんでした。」と言われ、その方がとても喜んで帰られたのがとても印象に残っています。 盛岡市では、映写ボランティアさんの活躍によって16ミリ映画の活用が続いていると感じています。 Q. 盛岡市で活躍されている「映写ボランティア」の特徴や、育成プログラムはどのようになっているのですか? (石塚) 盛岡では他の地域のように、ボランティア団体への委嘱や委託といったスタイルはとっていません。ボランティア団体へ委託してしまうと、上映の頻度は上がるかもしれませんが、フィルムの管理が難しくなってしまいます。 私は「本来の視聴覚教育」というものにこだわりを持っていますので、具体的な活動内容や維持管理にも自ら携わり、より身近な距離で利用者に接していたいと考えています。 また、財政的に余裕があると、すぐに業者に依頼したくなってしまいますが、盛岡市ではライブラリーの予算規模が小さいために、ボランティアさん同士が協力・工夫して活動に取り組む必要が生じます。ボランティアさんはそういったところにも楽しさを感じているように思えます。 映写ボランティアさんの登録人数は、盛岡市を拠点として約20人、その中で常に活動しているのは13人程度です。私は、大所帯になって団体内でグループが形成されることは好ましくないと思い、闇雲に人数を増やさない方針をとっています。 団体の「会長」さんは、技術的な知識が豊富で16ミリ映画にこだわりを持っている技術者気質の方が多く、他の会員の方とうまく役割分担しながら活発に活動されています。 映写ボランティア育成プログラムとしては、年に2回、年度の事業に関する研修会を行うほか、技術面の研修会として、適宜「16ミリ映写機操作技術講習会」を実施しています。(たとえば、上映施設によるレンズの使い分けなども指導しています。)このような技術面の研修に関しては、私は関与せずに任せています。 技術講習会は、(ボランティアさんに高齢の方が多いため)一斉に同じレベルで行うわけではなく、会長さんの方針に興味を持つ人から順々に技術を習得されているようです。私は、「手軽に出来る」ことをモットーにしているので、技術講習会が高度な部分にまで踏み込んでしまうときには、間に入って調整することもしばしばあります。 子どもに16ミリ映画を見せ、その子どもの「子ども」がまた16ミリ映画を見にきた、というように、世代を超えた繋がりを形成するため、映写ボランティアさんと共に、16ミリ映画の良さを後世へ伝えていきたいと思っています。 Q. 盛岡教育事務所の生涯学習振興の具体策の中に「16ミリ映画の活用促進と映写ボランティアの活動支援」が掲げられていて、盛岡市では中央地域視聴覚ライブラリーが中心となって16ミリ映画の活用・普及活動が進められているようですが、どのようにライブラリーは運営されているのでしょうか? (石塚) ライブラリーのスタッフは2人体制で、私が事務的な業務を行い、もう一人、非常勤の女性職員にフィルム点検や受付の窓口業務を担当してもらっています。 この他に、同じテーブルに社会教育主事さんが2人いらして、ライブラリーの電話応対や、時には機材の運搬などにご助力いただき、私も社会教育主事さんの仕事をお手伝いして、相互に協力する体制を築いています。図書館・公民館や県内のライブラリーなどに上映に行った際も、同様に協力し合っています。 岩手県内の視聴覚ライブラリーの中でも盛岡市が特に恵まれている点は、水沢地区や花巻地区のように図書館内ではなく、教育事務所内に視聴覚ライブラリーが設置されているところにあります。このため、事務所の先生方に直接ライブラリーの事業計画や新しい作品の紹介をスムーズにお話しすることができ、学校との連携が可能になっているのです。 視聴覚ライブラリー側から図書館や教育事務所に出向いてお話しようとしても、時間的な制約もあって職員の方が対応するのは難しいのが現状だと思います。県教育委員会の視聴覚担当の方には、中央地域視聴覚ライブラリーのような教育事務所とライブラリーの連携の大切さを、出先の他の地区の教育事務所に広めてもらいたいと願っています。 教育事務所の生涯学習振興の具体策に「16ミリ映画の活用促進と映写ボランティアの活動支援」と掲げてあるのは、当視聴覚ライブラリーの先輩方の配慮によるものです。県内の視聴覚教育に携わっていた方々が「ミミズク会」というOB会を結成されていて、代表の方がときどきライブラリーに様子を見にいらして下さいます。県の方へも年に一度、善意で訪問して下さっているようです。 岩手県には、視聴覚教育関係の古い時期の資料の残存状況がよくないため、ライブラリーの設立経緯や16ミリ映写機講習会の位置づけなどは、はっきりとわかりません。OB会が当時の様子を知ることのできる貴重な機会となっています。OB会のバックアップによっても現在のライブラリーの活動が支えられていると思います。 Q. 視聴覚ライブラリーは、社会教育関係のみを対象にしたところが多いように思いますが、中央地域視聴覚ライブラリーは学校も対象にされています。具体的な利用状況や、学校との連携をどのようにとっていますか? (石塚) 交通安全運動や読書週間の際などに、映写ボランティアさんと学校へ赴いて上映しています。学校教材として購入するのはDVDやビデオが主流となり、理科・社会などの授業で16ミリ映画を用いることは稀になりましたが、全校規模の校内映画会などの学校行事を通して、ようやく色々な学校に16ミリ映画が定着してきたところです。 その他に、PTA事業の一環としても上映会を行っています。 同じ映像を見ても感じることは人それぞれです。見ただけで止めてしまっては、一人で見るのと変わりませんが、視聴後にお互いにいろいろ話し合うことで、コミュニケーションに繋がったり、今後の活用に役立つヒントを得られることもあります。 学校行事として時間をとることが難しくても、子ども会やPTAのレクリエーション活動に取り入れることもできます。昨年は小学校4年生の親子のPTAレクリエーションとして、親子で同じ映画を視聴し、帰宅後に感想を話し合うことでコミュニケーションを図ってもらいました。映像を使うと会話の幅が広がることが実感してもらえたと思います。 さらに、ライブラリー側から積極的に学校の先生に研修会に参加してもらうように働きかけています。以前は、教員の新任研修等に「視聴覚教育」が盛り込まれていましたが、現在は無くなってしまい、視聴覚ライブラリーの存在自体を理解していない先生が大勢います。「視聴覚教育担当」の職務内容を、学校に配布される広報物の整理係程度にしか認識していない先生も多く、いかに学校側の関心が希薄であるかが窺えます。そのため、ライブラリー側が積極的に呼びかけて、視聴覚教育担当者等研修会を行っています。 このような研修会に参加したり、実際に16ミリ映画を使用した先生は、学校に戻ってから学んだことを実践してくださいます。やはり実際に体験しないと本当の良さがわからないのが視聴覚教材だと思います。今年の夏休みには、先生方からの要望で、16ミリ映画で教材研究を実施しました。先生がどのような場面で使いたいのかを窺って、活用できそうな教材を探し、実際に見てもらって話し合いを進めました。
先生方は、DVDもビデオも映画も、ただの映像としか捉えていません。教材の内容まで踏み込んだ研修会を行うことが大切だと思います。 〈次号へ続く〉 ◆えすけーぷ
◆全視連の財政問題や組織体制、事業計画等について加盟団体にアンケートを行ったが、極めて厳しい状況が浮かび上がってきている。 メールマガジンバックナンバー Copyright (C) 2009 National Association of Audio-Visual
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