視聴覚教育時報 平成21年1月号(通巻645号)index
◆私のことば 新春所感/井上 孝美(全国視聴覚教育連盟会長)
◆調査研究報告 視聴覚センター・ライブラリーにおけるメディア研修や講習の状況 メディア研修・約7割、68.9%の施設が実施
◆平成19年度 「教育メディア利用推進に関する調査研究事業」報告書 「手作り影絵作成講座」について(北九州市立視聴覚センター )
◆えすけーぷ
平成21年の新しい年、已丑、丑の年を迎え、新春おめでとうございます。
暮れの12日、京都・清水寺で「今年の漢字」が発表された。これは、日本漢字能力検定協会が平成7年より開始。一般公募したものを12月12日に決定し、1年を振り返るというものである。平成20年の漢字は「変」。清水寺の森清範貫首が「変」を揮毫する様子がテレビニュースでも映し出された。同協会は、応募者がこの「変」を選んだ理由としては、世界的金融恐慌、地球温暖化の深刻化、物価の上昇による生活不安。また、「変革」を旗印にアメリカの大統領選挙でのオバマ氏の勝利や、日本人4氏のノーベル賞受賞等いろいろな分野での変化を挙げ、「平成21年は世の中も自分たちも新たに変わっていき、希望のある社会にしていきたい」としている。
教育の分野でも、「変」の年でもあった。小・中学校の新学習指導要領が告示され、本年よりその移行が始まる。新学習指導要領の総則に、「各教科の指導にあたっては、児童生徒が情報モラルを身につけ、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を適切かつ主体的、積極的に活用できるようにするための学習活動を充実するとともに、これらの情報手段に加え、視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図ること」と明示されている。視聴覚メディアを供給するセンター・ライブラリーを傘下に持つ全視連としては、総則にある適切な活用のための視聴覚メディアの充実を全力で図り、利用者の要望に応えられる環境を整えることが急務だろう。皆さまとともに、センター・ライブラリーの課題解決を図っていくため、全力で取り組んでいきたいと考えているので、よろしくお願いしたい。
また、本年10月27日・28日に視聴覚・放送の合同で、愛知県岡崎・豊橋・豊田の3市を会場に、「ネットワーク社会における豊かな学びとメディア」を主題に全国大会が開催される。教育の新たな展望を開くにはメディアの活用は、どうあるべきかをじっくりとこの大会で考えていきたいと思っている。ぜひ、各加盟団体のみなさま方の参加をお願いし、年頭のご挨拶といたします。
平成19年度、241視聴覚センター・ライブラリーの協力を頂き、メディアに関する研修・講習の実施状況及びメディアボランティアの活動について調査を行い、全視連ホームページにアップロードしました。
ここで紹介する内容はあくまでも概要ですので、詳細について知りたい方は、ぜひ、全視連ホームページをご覧ください。
http://www.zenshi.jp/research/2007/report073.pdf
■調査のねらい
この調査は、視聴覚センター・ライブラリーを対象にメディアに関する研修や講習についてアンケートを実施し、その集計結果を分析し、メディア研修及び講習の現状や課題を明らかにするとともに、今後の取り組みの参考にするために実施しました。
また、アンケート結果を参考に、これから都道府県加盟団体や全国組織が研修や講習事業についてどのような支援を行うべきか考えるための基礎資料として役立てる意図も含んでいます。
■調査対象
全国視聴覚教育連盟加盟団体の傘下の視聴覚センター・ライブラリーのうち、研修・講習会を実施している施設を対象として、加盟団体のうち39団体の総計242ライブラリーに対して調査票を配布して行いました。
■調査結果
1. 人口規模が大きいほどメディア研修・講習の実施率が高い
地域別にみると、241センター・ライブラリーでメディア研修・講習実施の傾向を、地域別に見ますと、関東が85.3%と最も高く、中部、東北も70%を超える一方、近畿から九州にかけては、50%から40%と少なくなっており、東高西低の傾向があります。
また、設立主体別の違いをみると、政令指定都市では100%、都道府県75.0%、市区町村61.9%となっており、人口規模が大きくなるにつれてメディア研修・講習を実施する割合が高くなっています。
2. パソコンが東北と中国・四国で、ビデオが中部と近畿で、16ミリが東北と関東
実施されているメディア研修・講習事業の内容を見ますと、全437事業のうち、「16ミリ」「パソコン」「総合(教育)」「ビデオ」で、全体の約4分の3を占め、「16ミリ映画」が依然として大きな位置を占めていることがわかります。
また、ICT化の流れの中で、パソコンとビデオ関係が大きく台頭してきているのは当然かもしれません。
研修及び講習対象者で見ると「教育関係者対象の研修」が分野別の第2位を占めており、視聴覚センター・ライブラリーが教育関係者の研修の場として大きな役割を担っており、とくに都道府県の施設は「教育関係者の研修機関」としての性格が強いようです。
メディア研修・講習の地域別傾向としては、パソコンが東北と中国・四国、ビデオが中部と近畿、16ミリが東北と関東で高い割合を占めています。
広域にまたがる施設では、指導者養成に力を入れる傾向があり、啓発的な事業は「市区町村」の施設でのみ実施されており、政令指定都市では「パソコンについての研修」は全くありませんでした。
研修内容別事業数(全437事業)
3. 主な研修・講習対象者は市民、都道府県は教育関係者
「指導者養成」は「10万人」を超える施設のみで実施されているという結果がでており、対象エリアの規模が大きいほど「教育関係者の研修施設」としての性格が強いようです。
小中規模のセンター・ライブラリーでの研修・講習対象者は「市民一般」が約60%、「学校教育」と「教育全般」がそれぞれ15%となっています。
東北、中国・四国では「市民一般」の割合がおよそ70%割以上、関東と中部が60〜70%程度、近畿と九州がおよそ50%程度。近畿となっていますが、九州は教育関係者対象の研修・講習にウエイトを置く傾向が見られ、東北地方は児童生徒を対象とした研修・講習の割合が高いという結果がでています。
都道府県の施設では「教育関係者」の割合が全体の約60%を超え、それ以外の施設では「一般市民等」の割合が60%を超えています。
4. 予算の厳しい協議会・一部事務組合
研修事業予算の角度から見てみますと、平均予算額が10万円を超える事業は、「その他(英会話)」「総合(市民)」「デジカメ」「啓発」の4つで、予算が特に少ない事業としては、「16ミリ映写機講習」や「管理職対象研修」があげられます。
地域別平均予算額は、関東、中部、近畿が比較的多く、地域ごとに平均予算額がもっとも多い研修内容は、東北が「パソコン」、関東が「総合(市民)」、中部が「啓発」、近畿が「指導者養成」、中国・四国と九州が「デジカメ」となっています。
設立主体別平均予算額を見て見ますと、「政令指定都市」が突出しており、次いで「都道府県」、「市区町村」が続いています。行政組合等が設立したセンター・ライブラリーの多くは予算面で厳しい立場に置かれていることが推察されます。
人口規模が大きくなるほど1事業あたりの平均予算が多くなる傾向が見られます。
5. 大規模な施設で多いメディア研修や講習修了者の活用
メディア研修を行う166施設のうち、3分の1強の59施設(35.5%)が研修・講修修了者活用策を行っているようです。
対象エリア人口1万〜40万以下の施設で研修・講習を行っている割合は72%で、修了者を活用している施設の割合は66.1%。対象エリア人口200万〜900万以下の施設では、研修・講習を行っている割合が15%で、研修・講習修了者の活用は20.4%と割合が低くなっています。
対象エリア人口30万以下の比較的小さい施設では研修・講習修了者の活用割合が低く、対象エリア人口30万以上の比較的大きな施設では研修・講習修了者の活用割合が高い傾向が見られます。
地域別に研修・講習実施施設と研修・講習修了者の活用数・割合を見ると、東北・中部・近畿・中国の各地方が平均を上回っているのに対して、北海道・関東・四国・九州は、いずれも平均を下回っている状況が見えてきます。
6. 多い16ミリ映写と教材制作とパソコン研修・講習 修了者の活用
16ミリ映写講習を行なっている施設は33施設55.9%で、研修・講習修了者活用として16ミリをあげた施設は28施設47.5%。パソコン講習は37施設62.7%で、研修・講習修了者活用は教材制作を含めて30施設50.9%。メディア別では、パソコンと16ミリの活用策の割合と類似しています。
各地区ごとの活用策の割合を見ると、バランスの取れた東北・近畿地区、16ミリの多い関東・九州地区、パソコンが多いのは中部・中国地区となっています。
活用策を内容別に分類してみると、主に講習会などでの指導・補助を行なう「指導者」が47.5%、16ミリの上映を行なう「映写」が42.2%、「教材制作」が22.0%となっています。
東北地区は指導者の活用割合が高い傾向が見られます。
関東地区は活用策が1種類の施設が多く、映写の割合が単独で33.3%、指導者・映写を含めると50%を越えており、中部地域は、東北地方と同様にバランスのとれた研修・講習修了者の活用が行われています。
近畿・中国地方は教材制作での研修・講修修了者活用策を行なっている施設がありませんでした。九州地方は指導者 : 映写 : 教材制作が3 : 2 : 1で、指導者が半数を占めていました。
7. 必要なメディア研修や講 習修了者の活用
「活用策の検討は必要だと認識しているがまだ検討を行っていない。」が最も多く、63%。「活用策は必要だと考え検討している」を含めると、7割以上の施設が、何らかの活用策が必要だと考えている。
1. 少ないメディアボランティアの活用
次に、メディアに関するボランティアの活用について調査を行ってみました。メディアボランティアの活用を行っている施設は回答を寄せられた233件中50件(21%)でした。
つまり、メディアに関する研修や講習修了者の活用を行っていない施設は188件(79%)で、かなり高い数値を示しています。
ボランティア活用策を考えていると答えた施設(59件)のうちボランティア活動を行っていると答えた件数は32件で行っていない施設は27件という数字が示されました。
特別な活用策は考えてはいないがボランティアを活用している施設が13件ありました。
ボランティアを活用していると答えた施設は県立、政令指定都市が38件中9件24%、市町村、一部事務組合等が203件中41件20%となっていました。
2. 課題も多い施設運営ボランティア
ボランティア活動を行っている施設の活動内容は映画上映、講習指導が最も多く42%となっていました。
また、パソコン講習会指導が20%、事業等のビデオ撮影協力が21%と続いています。
運営面での主な成果は、ボランティアによる館内環境整備、自作スライドや8ミリ映画のデジタル化、地域教材の記録保管、センターの日常的な利活用や技術の向上、主催事業での講師や指導者、出張講習会等の実施などがあげられていました。
運営面での主な課題は、パソコン等機器の維持や機器の老朽化などによる対応する予算確保が困難、自作スライドや8ミリ映画のデジタル化は専門的な技術が必要で対応できるボランティアが限定される、機器に熟知したボランティアの確保、日程調整が大変など具体的な問題が提起されており今後のメディアボランティア活用策を検討するために参考になるでしょう。
3. 事業・活動ボランティアの光と陰
事業活動面での主な成果としては、16ミリ講習会の講師や指導者を務めたり、地域での上映会開催(同様意見多数)に積極的に協力して頂ける体制ができた。
ボランティアが撮影した映像をホームページ等で公開し情報活動の一翼を担えるようになった。
また、映画上映会が地区独自に開催されるようになり回数や参加人数増につながった。
自らの経験を踏まえ、パソコン講習会等での参加者に対するサポート等きめ細かい親身な指導ができ好評を得ており、受講者との交流が図られ人的ネットワークが拡大された。
事業活動面での主な課題は、継続して計画的に活動していくためには人材の確保が大切でることを認識する必要がある。
ボランティアの知識・技術・経験にはバラつきがあり、限られたグループや個人等に偏りがある現実を改善する必要があるように思われる。
事業活動を効果的に実施するためにはメディアに関する幅広い人材育成が必要である。
また、事業活動として、活動内容をどこまでボランティアに任せていいのか役割分担についても慎重に検討する必要がある。
ボランティアに対する研修や報酬の確保その他の支援がなかなか思うようにいかないのも大きな課題として解決策を考える必要があろう。
また、「高齢化が進んでいる」「講座等の修了者のボランティア意識が思うほどでなく登録者がなかなか増えない問題もある」などがあげられていました。
4. メディア活用に不可欠なボランティア活用策
現在は、ボランティア活用を行っていないと回答した188件のうち、研修を行い、修了者の活用策を行っている施設は26件ありました。
そのうち6件が今後の活用策を検討する予定があると回答していました。
また、研修修了者の活用策を行っていない施設で、今後の活用を検討していくと答えた施設は16件、研修を実施していない施設で活用を検討していくと回答した施設が6件ありました。
※注 本調査の取りまとめは村上長彦(足立区)中台正弘(春日部)田中耕治(青森)原田成夫(北村山)の各専門委員が、平沢茂文教大教授の指導助言を得て行いました。
◆事例調査研究委員のコメント
本事業は、保育所・幼稚園からの影絵制作に係わる要望に応え、影絵の理論、制作などのプログラム(基礎編・応用編)を企画・実践した「手作り影絵作成講座」である。特に、昨今、視聴覚センターの事業が視聴覚教材・教具の貸し出し、音楽や映画の鑑賞など縮小傾向にある中、視聴覚センターから主体的に取り組む実践を行ったところが本事業の特徴であり素晴らしいところである。
(全視連専門委員・丹治良行)
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表題 「手作り影絵作成講座」について
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北九州市立視聴覚センター |
平成19年度の総予算額 |
16、851、000円 |
うち本実践に関わる予算額 |
56、000円円 |
0. 実践の概要
当センターでは主として保育所・幼稚園・小・中学校・市民センター・教育関係・一般団体を対象として学校教材・人権啓発・社会教育の16ミリ・ビデオ教材および機材の貸出を行っています。保育所・幼稚園等から、「子供たちと身近に接しながら演じられる影絵の上演を企画したいのだけれども、影を映し出すスクリーンがなく是非とも常備してほしい」との要望があり、購入しました。教育教材やスクリーンを広く利用していただくため、広報はもちろんのこと、影絵の製作と上演の楽しさを理解していただくためのPRも兼ねて、影絵サークル手作り影絵講座を企画しました。
1. 実践の背景
保育所・幼稚園の先生やボランティア活動されている方々から、影絵劇セットの有無、影絵作成から上演に至るまでの作業方法などの問い合わせがあったことに加え、影絵スクリーンを常備したこの機会に、利用を促進していただきたいと考え、影絵の理論、製作、上演の講習会を企画、実践しました。
2. 実践のねらい
影絵には、幼い頃の旧き良き時代障子に映して遊んだ「指手影絵」をはじめとして、「切り絵」さらに本格的な「影絵劇」があります。「切り絵」や「影絵劇」は煩雑であるかのようにとらえがちですが、実際に学習してみれば身のまわりの材料を利用して意外と簡単にできることが理解できると思います。
今回は2日間を基本編、応用編とに分け、まず理論と製作方法を学習し、次に物語に登場する切り絵を一つのキャラクターとして活躍させる方法などをわかりやすく学び、影絵劇として完成する楽しさを実体験していただくことが狙いです。
3. 実践内容
20名の参加者を4班に分け、時間割に沿ってまず基本と理論を学び、その後切り絵と物語作りに挑戦していただき、影絵劇としての作品を発表して終了する2日間コースでした。
手作り影絵作成講座2日間の日程
4. 特長・工夫・努力した点
影絵制作に必要な材料がセットとして文具店等に常備されているとは限らないため、講師との打ち合わせをきめ細かに練り上げながらの準備で大変でした。また、ナイフやはさみ等を使用するため、怪我などの事故がないようにまた発生後の処置なども事前に熟慮して配備しました。
5. 実践結果
影絵講座の企画は、今回初めての応募開講で、多人数の参加希望があり、抽選になりました。参加者からは「影絵の世界は白黒と想像していたが、着色してカラフルなのに感銘を受けた。」、「自作の人形のスクリーン上での存在感に感動しました。」、「さっそく保育所で試してみたい」、「効果音や機材が借出できるので、利用したい。」、「一人で1作品を作り持ち帰り可能のコースを作ってほしい。」などの声も聞かれ、満足いく結果が得られました。
6. 考察および今後の課題
スタッフ一同講座に情熱をかけ、初回にしては見応えある画像だったと自負しています。アンケートでも、想像していた以上の力作となり感慨深かったという声が寄せられました。初歩の活動からさらなる上級への要望もありましたが、今しばらくはこのままの形態で続行し多くの人に創造の喜びとノスタルジーに浸っていただきたいと思うのです。
7. ホームアドレス
http://www.city.kitakyushu.jp/page/toshokan/av/
・先行き不透明な年、視聴覚センター・ライブラリー関係者は申すに及ばず視聴覚教育関係全体にとって厳しい現実が待っているような気がします。
・これからの全視連の在り方を求めて加盟団体の立場に立った改革案の取りまとめを行っています。
足元を固めつつ将来を見つめた確かな改革を目指しています。
・大きく変わるメディア環境の中で、地域に役立つ視聴覚センター・ライブラリーとしてどう機能したらよいか真剣に考えないと ”置いてけぼり“ になる恐れもなきにしもあらずです。
・来年度も、全視連が支援する地区別教育メディア研修会を予定しております。
主催者となる加盟団体の実情や課題に即して研修会を支援する事業です。
事業費が補助されるのですからぜひ応募しては如何ですか?
(M)
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