視聴覚教育時報 平成20年9月号(通巻641号)index
◆ちょっと待って、ケータイ/妹尾 剛(文部科学省スポーツ・青少年局青少年課青少年有害環境対策専門官)
◆平成20年度全国自作視聴覚教材コンクール社会教育部門・文部科学大臣賞に「牛と共に生きる―丹波篠山牛を育てる人たち―」兵庫県篠山市視聴覚ライブラリー受賞
◆「全国視聴覚教育連盟視聴覚教育功労者」決定―14名の方々が受賞―
◆平成19年度「教育メディア利用推進に関する調査研究事業」報告書2 「夕涼み親子映画会(野外映画会)の実施について」(茨城県日立市視聴覚センター)
◆えすけーぷ
「ちょっと待って、ケータイ」、これは、「私のことば」ではありません。保護者や教職員をはじめとする有害情報から子どもを守るすべての人々の合言葉です。
青少年を取り巻く社会環境は、発達途上にある青少年の人格形成に様々な影響を及ぼします。とりわけ、各種メディア上の性的な内容や暴力的な表現などは青少年へ悪影響を及ぼすことが憂慮されます。
社会の高度化・複雑化に伴い青少年を取り巻く環境は大きく変わっています。特に携帯電話は急速に普及し、小学生で約三割、中学生では六割、高校生では九割以上ほとんどの生徒が携帯電話を使用しています。しかも現在の携帯電話は、一部の高齢者向けを除けば子ども用も含めて通常の電話をはるかに超える機能を有しており、「携帯インターネット端末」と言うべきものであります。
そして急な連絡の際の手段として有用な反面、長時間利用により学習時間や睡眠時間が減少して生活リズムが乱れたり、インターネット上に氾濫している有害な情報により、様々なトラブルや事件に青少年が巻き込まれたりしています。
文部科学省では、学校において適切な情報活用能力の育成を図るための教育や、全国の小学校六年生全員に携帯電話利用の留意点を盛り込んだリーフレットの配布、総務省や警察庁と合同で携帯電話におけるフィルタリングの普及促進を働きかける通知文の発出などの取組を進めて来ましたが、この度、新たに映像資料(DVD)を作成し、都道府県、市区町村の教育委員会に配布することとしています。
携帯電話等を介してインターネット上に氾濫している有害情報がどのようなものか、それが青少年にとっていかに危険で有害であるかの理解を深めるため、保護者や学校関係者をはじめとする有害情報から子どもを守るすべての人々に「ちょっと待って、ケータイ(DVD)」をご覧いただきたいと思っています。
財団法人日本視聴覚教育協会主催、日本学校視聴覚教育連盟、全国高等学校メディア教育研究協議会、全国視聴覚教育連盟共催、文部科学省後援による平成20年度全国自作視聴覚教材コンクールは、全国からの応募総数124作品を対象に、慎重に審査を進め、次の通り入賞作品を決定しました。各部門の応募数は以下のとおりです。
○小学校部門(幼稚園を含む) | 42 |
○中学校部門 | 12 |
○高等学校部門 | 4 |
○社会教育部門 | 66 |
メディア別では、以下のようになりました。
○ビデオ(DV・DVD含む) | 77 |
○コンピュータソフトウェア | 27 |
○スライド | 2 |
○紙しばい | 17 |
○TP | 1 |
社会教育部門については、他の学校教育部門が伸び悩んでいるのに対して昨年比+16で、かなりの応募作品増となりました。
社会教育部門の応募は、総出品数66点と年々増えるとともに、審査の際にも、その作品としての質の向上が認められていました。しかも学校教育部門として出品されながらも、その制作に視聴覚センター・ライブラリーが様々な形で支援している様子が読み取れ、改めてこのジャンルにおけるセンター・ライブラリーの存在感を感じさせました。
今年度の社会教育部門文部科学大臣賞には、例年質の良い作品を出品している兵庫県篠山市視聴覚ライブラリーの「牛と共に生きる―丹波篠山牛を育てる人たち―」が受賞の栄に輝きました。
そのほか、社会教育部門出品作品はいずれも上位入賞に数多くランクされ、9月19日東京・霞が関東海大学校友会館において開催された表彰式において表彰されました。
平成20年度全国自作視聴覚教材コンクール入賞作品
全国自作視聴覚教材コンクールホームページ
全視連が例年実施している「全国視聴覚教育連盟視聴覚教育功労者表彰制度」も本年度で第11回を数えることとなりました。今年度は、教育委員会並びに加盟団体より視聴覚教育推進にご尽力され、ご功績のあった方々を全国より推薦いただき、去る8月27日(水)に選考委員会を開催し、下記のように14名の方々が功労者として決定いたしました。
なお、表彰式は、10月25日(土)東京・国立オリンピック記念青少年総合センターで行われる全国大会全体会の席上で行われます。
平成20年度全視連視聴覚教育功労表彰者
◆事例調査研究委員の コメント
世代を超えた地域の人たちが同じ時間を共有する機会として、野外映画会を行っている。草刈り、会場作り、手製スクリーンの設置などの準備から、当日の駐車場の整理など、地域の有志の人々に支えられて500人以上の来場者を迎えることができる。
一昔前は、よく見られた夏の風物詩も、今では珍しくなってしまった。そんな事業を通して地域の人たちと触れあえる姿こそ、視聴覚センター本来の姿であろう。
(全視連専門委員・佐野浩之)
土王地区での野外映画会
表題 夕涼み親子映画会(野外映画会)の実施について
日立市視聴覚センター
平成19年度の総予算額
71、699、000円
うち本実践に関わる予算額
400、000円
0. 実践の概要
日立市内には、各学区に地域コミュニティが中心となって運営する「交流センター」が23設置されている。その地域コミュニティとの協働により、昔懐かしい野外映画会を実施した。
2006年度視聴覚センターの近隣公共施設が老朽化し建て替えることとなり、新しい施設には地域コミュニティが運営する「大久保交流センター」が新設された。またこの施設には屋外広場が完成し、野外でのイベントが出来る状況が創出されたのである。そこで夏休みに家族全員で楽しめる映画会を開催することとし、運営に当たっては、地域コミュニティを中心とした実行委員会を組織し、地域全体を巻き込んだ協力体制で行った。2006年度の第1回目は、500名以上の来場者があった。そして2007年度は突然の雷雨による会場変更にもかかわらず、300名以上が来場した。
また本年からの新しい会場として、市町村合併により旧十王町に新しいコミュニティが組織されたのを機会に、その地域で開催した。ここでは好天に恵まれ、地域の協力により500名を超える来場者があった。
1. 実践の背景とねらい
2006年度視聴覚センターの近隣公共施設が老朽化し、新たに建て替えることとなり、新しい施設には地域コミュニティが運営する交流センターが新設された。またこの施設には屋外広場が完成し、野外でのイベントが出来る状況が創出されたのである。
世代を超えた地域の方々と同じ時間を共有することが少なくなっている現在、親子や家族で楽しめる空間を創出できないか、地域の活性化を図るにはと検討した結果、新しい施設が出来たことを契機として、地域コミュニティを中心とした地域協働での事業展開として夏の夜に野外映画会を開催することとした。そして地域コミュニティ、商店会、PTA、子ども会及び行政と実行委員会を組織し、第1回目の事業を展開したのである。事前の広報、当日の会場準備等、地域の方々の協力で実践し、500名を超える鑑賞者が集まった。この事業が夏休みの行事として地域に定着させたいとの意識が芽生えた事業であった。
2007年度は前年度実施地に加え、市町村合併により新たな地域コミュニティが組織された地区で、その事業の一つとして実践することとした。
2. 実践内容
事業展開に当たっては、まず地域を中心とした組織作りから始まった。これには、地域協働での事業展開を重点に置き、地域コミュニティ、商店街、PTA、子ども会等で実行委員会を組織したのである。ただし地域の状況によって違いもあるので地域別に紹介したい。
(1)多賀地区
この地区は前述した「大久保交流センター」を拠点とし、大久保学区コミュニティ推進協議会、多賀地区連合商店会、大久保小学校PTA、大久保学区子ども会育成連合会、日立市青少年相談員連絡協議会、そして会場の広場を管理する多賀市民会館の方々で実行委員会を組織した。実行委員会においては、会場の設置について(客席、スクリーン等)、上映作品の検討、広報、運営等についての検討を行った。2006年度は初めてであったので、試行錯誤をしながらの運営となった。広報については、コミュニティ(2006年度多賀地区)推進会の協力により、地域に配布する日立市報にチラシを折り込んで配布し、ポスターについては、連合商店会の協力により各商店に掲示していただいた。また客席については、椅子だけではなく、大型のダンボールを敷いた客席を設置することとし、商店会がその準備を行ってくれた。上映にあたっては、近隣の住宅も照明を消してくれるなどの協力もあり、500名以上の来場者で賑わった。2007年度は前年の経験を生かし、準備は順調に進んだのだが、上映会当日に激しい雷雨となり、会場を屋外から屋内の多賀市民会館ホールへ変更しての実施であった。準備中より地元の方々が「この雲は間違いなく雨になる」との言葉があり、それを信じて会場を早めに変更したために大きな混乱もなかった。激しい雨の中、来場者があるのかと心配されたが、300名を超える来場者で賑わったのである。
(2)十王地区
一つの自治体「十王町」であったが、市町村合併により日立市となった。新しいコミュニティが発足し、様々な事業が展開され始めたのである。
十王交流センターを拠点とした「十王地区コミュニティ推進会」を中心に文化協会、商工会の方々に協力いただき実行委員会を発足し、映画会開催に向けて動きだしたのである。
まず会場の選定が問題であった。屋外・屋内が使用可能であり、スクリーンの設置が可能、交通の便が良いなど条件を検討した結果、市立櫛形小学校を利用することとなった。夏休み期間の夜間であったが、学校の協力も得られ開催することとなった。駐車場については、小学校という場所で一般の駐車スペースも少なく、来場者の安全を考慮した結果、民間の土地を提供していただいたのであるが、荒れ地であったために、地域住民有志の協力で草刈りを行っていただき、利用できる状態になったのである。地域の方々の努力により、500名以上の来場者を集めなごやかな雰囲気の中で映画会が開催できた。
| |
会場の櫛形小学校 | 草刈り後の地域の方々 |
3. 実践内容
視聴覚センター主導で開催した行事ではあるが、いかに地域と協働で開催できるかが大きな課題であり、努力目標であった。
地域性が違う場所でいかに一つの目標を達成するかは、その地域を知らなければ難しいことである。視聴覚センターとして教材・機材の提供だけでなく、それぞれの地域の中での事業を展開する場合には地域との協働が欠かせないことであることを体感した事業であった。
多賀地区、十王地区の双方とも実行委員だけではなく、地域コミュニティを中心として、多くの市民が協力して映画会が実施できたことは、今後の事業展開において、その地域の自主的事業として位置づけられ、その事業に対して視聴覚センターが助長援助していくことが可能であると考えられる。
親子や家族で楽しめる空間の創出、地域コミュニティを中心とした地域協働での事業展開、地域内の各団体の連携、そして地域の活性化を目標として掲げて開催したことであるが、わずかながらでもその目標に近づいている事業であった。そして、この事業が夏の行事として地域に定着させていきたいとの意識が、参加した方々に芽生えた事業であったと言えるだろう。
4. 特長・工夫・努力した点
(1)今後の運営について
前述したが、地域の自主事業として開催され、視聴覚センターが協力していく形が理想であろう。しかし、映画会を開催するに当たっては、上映作品の借料や会場費など金銭的な問題が大きなウエイトを占めてくるであろう。行政が負担するか、地域で負担するか、有料として鑑賞者が負担するかなど課題は少なくない。この課題については、事業の位置づけを含め今後の検討課題であろう。
(2)会場の問題について
映画会開催に際して、会場を固定化するか、市内各地域で実施していくかについて、今後検討していかなければならない。屋外でも屋内でも上映できる環境があり、交通の便も良い、夜間でも使えるトイレがあるなど様々な条件が考えられる。市内全域を考えるならば、各学区で開催することが望ましいのかもしれない。しかしその一方、会場を固定化し、野外映画会の拠点とする考え方もあるだろう。
今後も地域コミュニティとの関係を密にし、よりよい映画会を開催する最善策は何かを協議していく必要があるだろう。
5. ホームページアドレス
http://172.31.1.16/upload/freepage/havc/
◇自作視聴覚教材コンクールの表彰式が行われ一年間頑張ってこられた方々の晴れ晴れとしたお顔を見て嬉しくなりました。
頑張った方々はそれなりに報いられなくてはなりません。惜しくも入賞の機会を逸してしまった方々は、またの挑戦を期待します。
◇平成20年度全視連視聴覚教育功労者も14名の方々に決定しました。地域の視聴覚教育を支え、地道な活動を長年にわたって努力されてきた方々に御苦労さまでしたと申し上げます。
◇図書館司書のように、映像専門職員を養成することがこれからの時代に必要だという意見がありましたが、司書の確保さえ難しい状況に映像専門職員とはと悲観的なコメントもありました。
新たに作ることも大切ですが、今あるものを生かして使う知恵も必要ではないでしょうか。視聴覚ライブラリーがそれでしょう。(M)