視聴覚教育時報 平成20年8月号(通巻640号)index
◆全国視聴覚教育連盟の皆様とともに/井上 孝美(全国視聴覚教育連盟会長)
◆全視連事業の推進力 第1回専門委員会開催
◆盛岡教育事務所管内 視聴覚教育担当者研修会開催 /今野 洋明(盛岡教育事務所企画総務課主任社会教育主事)
◆新潟県教育メディア研修会開催/丸山裕輔(新潟県立生涯学習推進センター社会教育主事)
◆平成19年度 「教育メディア利用推進に関する調査研究事業」報告書 「わが町かわさき映像創作展」の実施について (川崎市視聴覚センター)
◆えすけーぷ
さる7月1日、全国視聴覚教育連盟の会長をお引き受けすることとなりました。過分なことでありますが、皆様のご指導とご協力をお願いし、重責を果たしたいと存じます。
私の視聴覚教育との最初の出会いは、小・中学校における学校教育放送の視聴や文部省選定映画の「二十四の瞳」や「ひめゆりの塔」を学校教育の一環として視聴して感銘を受け、今でも心に残っていることです。文部省在職中には、最後の社会教育局担当審議官と最初の生涯学習局担当審議官として、視聴覚教育を3年間担当しましたが、ちょうどIT時代の幕開けの頃で新しいメディアの活用方策などの施策を講じたことと、大学局企画官として、大学教育に放送を利用するための放送大学の創設と、最近10年ほどは放送大学の充実・普及の仕事に携わり、生涯学習の充実のため、国民の多様かつ高度な学習ニーズに応え、放送による教育の効果的活用を推進してきました。
全視連の歴史を振り返ってみますと、昭和28年創設以来、55年間にわたり、社会教育における視聴覚教育の推進と視聴覚センター・ライブラリー等の充実発展に尽くして参りました。
その間、情報通信技術の進展は著しく、地域社会における情報環境は大きく変化し、インターネットをはじめ、デジタル放送、携帯電話など新たなメディア利用が普及し、教育の方法も大きく変わってきています。
このような情報化社会の進展に伴って、これからの全視連は、生涯学習の充実を図るため、情報化社会に対応した教育メディア環境の整備充実やその活用を推進することの社会的・教育的意義を評価し、情報通信技術と融合した新たな視聴覚教育の方法の普及に努めなければならないと考えております。
全視連の当面の課題である教育メディア利用推進体制の充実、地域における視聴覚教育事業の更なる推進、映像コンテンツのネット配信に関する著作権問題への適切な対応などにも、皆様とともに取り組んで参りたいと存じます。
全視連活動の中核的役割を担う、専門委員の会議が去る7月25日、(財)日本視聴覚教育協会会議室において開催されました。専門委員会は各地方で視聴覚教育や生涯学習のリーダー的立場にある方々12名で構成されています。
会議に先立ち、今回新たに全国視聴覚教育連盟会長に就任された井上孝美会長より「情報化社会の進展に伴って、これからの全視連は、生涯学習の充実を図るため、情報化社会に対応した教育メディア環境の整備や、その活用を推進することの社会的・教育的意義を再確認し、情報通信技術と融合した新たな視聴覚教育の方法の普及に努めなければならない。
各地域のリーダー的役割を担っておられる専門委員の皆様の忌憚のないご意見を頂き、全視連事業の充実にご協力をお願いしたい」との挨拶があり、続いて、今年度より専門委員として委嘱された4名の方々に委嘱状が手渡されました。
専門委員長 | 松田 實 |
副 〃 | 村上長彦 (足立区青少年セ係長) |
特別専門委員 | 吉田広毅 (常葉学園大准教授) |
専門委員 | 出頭信二 (茨城・鹿嶋市立中野東小教頭) |
同 | 丹治良行 (栃木・総合教セ社教主事) |
同 | 中台正弘 (埼玉・春日部市視セ主査) |
同 | 中村祥一 (千葉・総教セ研修指導主事) |
同 | 白井 浩 (せんだいメディアテーク主査) |
同 | 丸山裕輔 (新潟・生涯学推セ社教主事) |
同 | 梶元達也 (岡山・生涯学セ情報課課長) |
同 | 田中耕治 (青森・総社教セ指導主事) |
同 | 原田成夫 (山形・北村山視セ所長補佐) |
1. 専門委員の役割
◇事業の具体的企画運営
全視連事業の推進を図るため、各都道府県視聴覚教育加盟団体の協力を得て、専門委員会を強化し、理事会・常任理事会等で承認決定した事業の具体的企画運営にあたる。
また、専門委員会議を、情報交換・研修機会としても活用していくよう配慮する。
◇本年度の改正事項
総合全国大会の全視連関係分科会に関し、専門委員がその企画運営(含登壇)にあたるようにするとともに、「利用推進体制の検討」「著作権問題」「加盟団体研修支援」を中心課題として活動の充実を図る。
2. 各専門委員会の活動
専門委員の趣旨及び本務との関係から、会議は年2回程度とし、他は全国大会や業務の性質や状況により会合を持つが、大半は在任地において業務を処理できるよう電子メールの活用等により連絡調整を図るように配慮する。
特に、本年度は総合全国大会の分科会の司会者としてあるいはコメンテーターとして、実質的な活動を行うことになり、分科会のねらい、協議の進め方等について詳細な提案が行われ了承されました。
詳しい分担については、平成20年度第12回視聴覚教育総合全国大会・第59回放送教育研究会全国大会合同大会の案内に掲載いたしました。
また、例年実施している調査研究の内容について担当グループごとにテーマ及び内容・方法等について打ち合わせ及び各地方の情報交換が行われました。
〇調査研究事業(調査研究計画の立案検討と実施、調査結果の分析考察とりまとめ)
・調査研究1(出頭・中村・丹治)「教育メディア利用推進体制に関する提言」の作成
・調査研究2(中台・梶元・丸山)「自作地域映像コンテンツのネット配信に関する事例調査」
・調査研究3(原田・田中・白井)「視聴覚ライブラリー所有市販教材の管理及び利用に関する調査」
・新教育映像に関する調査研究事業(村上)
〇著作権関係研究会(村上・梶元)
〇全国公立視聴覚センター事業(中台・中村)
〇教育メディア担当者ハンドブックの作成(村上)
〇広報事業関係(村上)
7月28日(月)、サンセール盛岡において、盛岡教育事務所及び同管内教育振興協議会中央地域視聴覚ライブラリー主催の視聴覚教育担当者研修会を開催しました。
視聴覚教育の重要性を鑑み毎年開催している本研修会ですが、今年度は全国視聴覚教育連盟共催のもと、小中学校や各市町村教育委員会の視聴覚教育担当者、映写ボランティア等90名が参加しました。
全視連専門委員長松田實氏の講演は、学校教育や社会教育における経験談や研修者の視聴覚教育に対する疑問や課題にも答えていただきながら、次のように進行しました。
1 クロスメディアの時代
2 メディアの多重化で変わる視聴覚教育
3 再考 : 視聴覚教育の意義
4 もうひとつの視聴覚教育
5 映像に込められたメッセージ
6 映像記録を通して伝える(情報伝達)
7 情報化社会の中で求められる視聴覚教育の方法
視聴覚教育担当者としての経験が少ない研修者のことも踏まえ、視聴覚教育の歴史や意義など基本的なことを確認していただいた後、情報化社会におけるこれからの視聴覚教育について講演をいただきました。
最後に松田氏は、視聴覚教育はICT化の進捗普及とともに新しい時代を迎えており、これからの視聴覚メディアは、従来の単線形利用に加えて、Webサイトやインターネット、テレビ、CATV等と融合した形で大きな役割を担うことになると話されました。さらに、インターネットの普及は、誰もが映像を作成し、動画をサイトにアップでき、様々な動画サイトから自らが望む映像コンテンツを検索し、ダウンロードして利用できる時代に入ったこと、そして、そのような光の部分に対して、著作権や肖像権問題、情報セキュリティなど解決しなければならない問題も多いが、その実現のためには納得と協力が得られる計画と不退転の努力が、きっとよい方向を見出してくれるだろうと結ばれました。
講演終了後のフィルムフォーラムでは、名画「そこに、愛」を鑑賞し、全員で感動を共有した後、意見交換を行い本研修会を閉じました。
研修者からは、「今後の視聴覚教育のあり方について考えていたので、よい研修機会となった」「今も昔も情報リテラシーを育てることが大事であることを再認識した」「視聴覚教育担当者として、自分がすべきことが見えてきた」などの感想が聞かれました。
先日、研修会に参加した先生から、町内の先生16人と教材試写会を開催し、活発な意見交換をしたとの知らせが届きました。学校での利用は減少傾向にあると言われる16ミリフィルムですが、早くも研修会の波及効果が表れたものと担当者も喜んでいます。
8月8日(金)、新潟県立生涯学習推進センターにおいて、全国視聴覚教育連盟共催のもと、「メディアの活用と生涯学習」というテーマで教育メディア研修会が開催されました。
当日は、県教育行政・学校教職員、地域視聴覚ライブラリーや生涯学習施設職員、市町村社会教育委員・公民館職員、市民活動支援センターや映画ボランティアなどの方々が、県内各地から参会されました。
新潟県立生涯学習推進センター松井周之輔所長の開会挨拶の後、講義が始まりました。講義1では、e-ネットキャラバンの下坂昇氏から「インターネット・ケータイの危険から子どもを守ろう」という講話をしていただきました。携帯電話のトラブルや学校裏サイトの事例などをもとに、家庭でのルール作りやコミュニケーションの大切さをお話しいただき、情報モラル教育を考える視点を提供していただきました。
講義2では、筆者により、「メディアによる学校と社会の連携」という講話をしました。公立図書館・自然科学館といった生涯学習施設と学校とをテレビ会議システムでつないだ遠隔授業の実践例を報告しました。メディアが子どもたちの学びを広げたり、深めたりする役割を担う可能性について、話を展開しました。
その後、全国視聴覚連盟事務局次長の佐藤正氏からのご挨拶がありました。全視連の事業や今後の取組について、参会者に直接お話いただけたことは、大変貴重な機会でした。
続く講義3では、(財)日本視聴覚教育協会事務局長の下川雅人氏をお迎えし、「教育におけるメディアの活用」という講演をしていただきました。学校教育におけるメディアの活用、地域映像教材の制作(デジタルアーカイブ化)と提供、e-ラーニングと生涯学習について、豊富な事例をもとに視聴覚教育の歴史から未来像までご講話していただきました。
講義の後のトークセッションでは、講師の下川氏を中心に参会者からのQ&A方式で意見交換をしました。地域視聴覚ライブラリーからは映像制作に関わる方策や著作権の問題が出され、学校教育関係者からは地上デジタル放送に関わる質問などが出されました。下川氏からは、それぞれ丁寧に回答していただくと共に、視聴覚教育が今後発展していく上での方向性を示していただきました。
◆事例調査研究委員のコメント
「映像のまち川崎」という都市の魅力づくりの一環として、「わが町かわさき映像創作展」を実施している。映画制作活動を通した郷土の再認識と映像制作の技術、創造性の育成をねらいとしており、優秀作品については保管し団体貸出しを行っている。市民や児童・生徒に対して映像文化を浸透させるとともに、郷土をテーマとすることで郷土映像の記録をも狙った、地域に密着したより実際的な事業として大いに参考になるものである。
(全視連専門委員・中村祥一)
表題 「わが町かわさき映像創作展」の実施について
川崎市視聴覚センター
平成19年度の総予算額
3、828、000円
うち本実践に関わる予算額
116、000円
0. 実践の概要
川崎市視聴覚センターを運営する情報・視聴覚センターでは、フィルムや機材のライブラリ業務だけでなく、市民の自主制作の映像コンテストである「わが町かわさき映像創作展」や、市内の名工、優れた技術者を紹介する映像教材「川崎の職人シリーズ」の制作を続けています。
わが町かわさき映像創作展は、まだビデオカメラが家庭や学校に普及する前から映像表現の持つ可能性に目を向け、市民自らが川崎を様々な角度から記録した作品や自由なテーマで日常生活を表現した作品を募集し、審査・表彰を行ってきました。1983年から実施し、今年度で25回目のコンテスト開催を迎えた歴史のある映像コンテストとなっています。
応募作品のうち、優れた作品については川崎市視聴覚センターにおいて市民貸出し用として供され活用されています。
1. 実践の背景
川崎市は、4つのシネマコンプレックス(41スクリーン、約10、000席)に加え、市民ミュージアム、アートセンター等、映画鑑賞施設が集積している都市です。
また、市役所をはじめとした市内各所で、映画やドラマ、CM等の撮影が多数行われており、臨海部の「テクノハブイノベーション川崎」には新たな撮影スタジオ「川崎5スタジオ」がオープンする等、映像制作も活発に行われております。
さらに、映像関連の人材については、川崎に拠点を置く林海象監督や脚本家の山田太一氏の活躍があり、また、麻生区には、李相日監督(『フラガール』)や本広克行監督(『踊る大捜査線』)をはじめ、脚本家やプロデューサー等、多くの人材を輩出している日本映画学校があります。
また、市民主体の実行委員会が開催している「KAWASAKIしんゆり映画祭」は2007年度までに13回を数える映画祭であり、本事業「わが町かわさき映像創作展」も25回目となります。
これら様々な映像関連資源を活かした新たな都市の魅力づくりに向け、「映像のまち川崎」として、各主体による連携した取り組みが始まろうとしています。
(http://www.city.kawasaki.jp/25/25koho/home/shisei/htm/080221/1_1.htm)
2. 実践のねらい
この事業は、市民および児童・生徒らの創造的な映画制作活動を通して、日常生活に映像文化を位置づけることを目的としています。川崎をさまざまな角度から記録したり、自由なテーマで日常生活を表現したりした作品を募集し、審査・表彰・公開することにより、川崎を再認識し、視聴覚教育の裾野を広げるとともに、映像制作の技術、創造性の育成を求めています。
3. 実践内容
映像コンクールとして作品の募集時には、以下の内容・条件を付しました。
@作品はビデオ作品(DVD・DV・8ミリ・Cカセット・VHS・S-VHS)とし、制作にあたっての技法及び機器は問わない。
A作品の部門及びテーマ
・「課題の部」…川崎に関するテーマの作品
・「教材の部」…学校教育の教科・領域に関する作品
・「自由の部」…自由なテーマの作品
B作品の時間は15分以内とする。
C応募作品数の制限はなく、1本のテープに1作品とする。ただし、同一人が同一内容の作品を、作品名・時間を変えて応募することはできない。
D作品は過去2年以内に制作されたものとする。また、他のコンクール等で入賞した作品はのぞく。ただし、学校からの作品については学校の組織で実施された作品展等の入賞作品であっても募集対象とする。
E作品の制作にあたって、音楽や脚本等を使用する場合は、著作権を侵害しない手続きを済ませたものとする。
F川崎市教育委員会は、入賞作品の貸出・複製・配布・広報・上映ができるものとする。
これらの条件下で、2007年度は32作品の応募がありました。応募作品に対し、映像に携わる学識者、大学関係者、市内学校関係者からなる審査委員会を行い、予備審査、本審査を経て、14点が優秀作品として選ばれました。
【金賞となった2点】
『私たちのトンネルアート 〜地域と共に明るい野川をつくるために〜』
『東京湾に残された自然 三番瀬の鳥たち』
【銀賞となった2点】
『わたしたちのFantastic Story』
『片平の伝承 〜人と地域を育てる夏蒐太鼓(なつかり だいこ)〜』
【優秀賞となった4点】
『カラスウリの花』
『メイちゃんビデオ』
『遠来からの使者』
『思い出に変わるまで 〜42年間ありがとう〜』
【奨励賞となった6点】
『西梶クイズQ』
『わが家の自然日記』
『おしえて!げんきのひけつ なぁに?』
『丸山のみりょくを大紹介 遊具・自然』
『はたらくひとびと 〜じむ しょくいん編〜』
『西高津中アーカイブ 〜創 立50周年記念作品〜』
2008年3月1日、優秀作品の表彰式と上映会を行いました。応募した関係者以外にも、一般の来場者も訪れました。
そこでは、審査員の講評の他、作者から制作に携わっての思いを聞いたり、上映作品ごとに3会場を設置して互いの作品を鑑賞し合うことができました。
4. 特長・工夫・努力した点
25回を実施し、毎年の募集ですが、映像の制作には多くの時間を要するため、募集広報を夏から行い制作期間が確保されるよう注意しました。また、市内学校に協力依頼をし、学校からの応募を募ることで応募作品を求めていきました。
また、映像制作にあたっては、肖像権や著作権等、募集時に注意を促すなど配慮しています。
5. 実践結果
川崎を再認識し、市の映像・文化活動の向上を図ることを目的としていましたが、今回の優秀作品については、過去の作品同様、川崎市視聴覚センターにおいて団体貸出しがされます。表彰式の様子が報道されたことや、今後の目録の掲載により関心をもった団体への貸出しが想定されています。
川崎を写した映像作品、川崎の子どもたちがつくった映像作品として、市民の財産として保管・活用されていくことと考えます。
6. 考察および今後の課題
映像制作の負担、スキルが求められるためか、応募者の増加がなかなか難しくなっています。新たな応募者層の拡大に向けては、募集時の広報の充実、募集時の条件の精査、表彰にあたっての副賞の見直し等、様々な角度からの検討が想定されます。
特に、映像制作の媒体が変化し、編集もノンリニアが主流となっていますが、一般向けの映像制作に向けた講習会が実施できていない状況にあります。映像制作をやってみたい人をフォローする何らかの手立てが必要だと感じています。
7. ホームページアドレス
http://www.keins.city.kawasaki.jp/1/KE1031/index.html
◇大阪市を第1回として始まった地域別教育メディア担当者研修会も、予定していた地域での研修会を終了することができました。
この研修会を拡大させ全国をブロックに分けて定期的に開催できるようになればという夢を持っています。
◇全国大会案内が送られたことと思います。全視連関係も第1日は内田洋行の協力を得て、ネットワークを使い、福井市映像文化センターとの二元中継によるシンポジウムを計画中です。
全国の視聴覚教育施設関係者あるいは生涯学習関係者の方々の参加をぜひお願いいたします。
◇今年も、素晴らしい作品が目白押しの自作視聴覚教材コンクールの審査が終了しました。結果については後日発表されることと思いますが、嬉しいのは社会教育部門の作品が右肩上がりで増えていることです。(M)